あなたは1時間以内に1RTされたら、幼馴染みの設定でキスから関係が始まるカイ遊の、漫画または小説を書きます。
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・遊馬がカイトと幼馴染
・バリアン世界とかアストラル世界とかない
・学校がサラっと中高一貫になってたりする
カットアウト
自分の頭に届くほどの紙束を抱え込んだまま、遊馬は階段の前で立ちすくんだ。
「うわぁ~!! これじゃあ前見えねぇよ! どうやって降りるんだよこれ~!!」隣りに立つ小鳥が遊馬の背を小突く。
「元はと言えば、宿題を忘れる遊馬が悪いんでしょ。委員長の手伝いだけで済んでよかったじゃない」そう遊馬がぼそぼそと零すと、小鳥は遊馬の持つ紙束を顎ほどまで取り除いてやる。遊馬に比べれば遥かに少なくはあったが、それでも少女の細腕では頼りない。
「小鳥?」落っことしてしまわないようにしっかりと両腕に抱え直すと、小鳥は眉尻を下げにこりと笑む。
「早く済めばデュエルもできるでしょ?」遊馬の目がきらめく。腕が使えない分、大げさなほど顔で感情を表す遊馬に調子がいいなと小鳥は胸の内で漏らす。
「よーし、そうと決まれば! かっとビングだぜ、オレー!!」言うや否や、遊馬は階段を駆け下りていってしまった。今は放課後、中央階段下のエントランスの正面には昇降口があり、東棟から高校生、西棟からは中学生が帰路へつくために多数集まっている。なによりちょうど真下には人が立っていた。青年はDゲイザーをいじっている様で自身へ向かってくる遊馬に気付いていない。
小鳥が止めるのも間に合わず、遊馬はものの見事にその人へと激突してしまった。紙束の散らばる音が聞こえる。
「いって~……!」両者ともにうずくまったまま、額を抑えながら呻いている。
小鳥は急いで傍に行きたいのを堪え、遊馬の二の舞にならぬようゆっくり階段を下りる。
「な、なあお前大丈夫か!?」青年はヒビの入ったDゲイザーをひと撫でし、反応がないのを確認し嘆息をもらす。
(うわ~、オレ弁償とかできねぇよ~!)それを見ていた遊馬は自分の財布の中身を思い出しながら背筋を凍らした。怪我の有無だけでも、となにも映さないDゲイザーを見つめる顔を覗き込む。
「あの、ほんとにごめんな!? ……アレ、カイト?」その声に青年ははたと顔を上げる。
「わ! カイトじゃん! いつこっち帰ってたんだよ!! てかなんでここにいんの!?」
正面から顔を確認できた遊馬は先ほどまでの消沈した表情はどこぞへとやってしまい、矢継ぐ早に質問を投げかける。
カイトと呼ばれた青年は微笑ましげに一度は口元を緩めはしたが、スと表情を固める。
「カイト?」それまでウキウキとした様子だった遊馬はぐうっと言葉に詰まる。そこに荒れた息を整えながら小鳥が駆け寄ってきた。
「遊馬! 人がいるって、言ったのに!」居心地悪そうに遊馬へと言葉をぶつける小鳥の目が自責の念に揺らぐのが見え、カイトはDゲイザーを懐へ仕舞うと立ち上がった。
「気にするな。呆けていたオレが悪い」ぶつかったときの申し訳なさそうな殊勝な態度はもうすっかりなくして、ケロっとした顔の遊馬に小鳥もほとほと疲れた様子で小言をこぼす。
「な、な、カイトはなんでここにいるんだ?」小鳥の小言を振り払い、遊馬はカイトへ詰め寄る。
「少し前に日本に戻ってきたばかりでな、オレも18になった。大学へ腰を落ち着けたくて、編入手続きをしていたんだ」
「えぇー、それじゃあもう来年卒業じゃん! 一緒の学校通えると思ったのに」
てっきり海外の大学へ行くんだと思ってたから、こっちにいてくれて嬉しいけどな!と、落ち着きなくカイトの周りをまるで飼い主を迎える犬みたくうろうろする遊馬をカイトがたしなめる。
その様子は仲のよい兄弟のようだ。すっかり蚊帳の外となってしまった小鳥が、タイミングを計りかねながらも尋ねる。
「えっと……ねぇ、遊馬、知り合い……なんだよね?」
「おう! カイトの父ちゃんとオレの父ちゃんが知り合いでさー、小さい頃よく遊んだんだよなー!」
「小さい頃……? でも、私、遊馬がカイトさんと遊んでるとこなんて、見たことないわ」
「え? そうだっけ?」
「オレは幼少期から海外に住んでいた、遊馬と会ったのも一馬さんに連れられて家に来たときだけだからな。知らなくて当然だ」
んん?と顎に手を当て、自分の記憶を探る遊馬に代わり、カイトが答える。言外に自分の記憶力のなさを咎められた気がして、遊馬は頬を指先でかいた。
「あはは……。まあ小さい頃だし、あやむやって言うか、な!」カイトに二度もバカにされてしまい、遊馬は不服そうに頬を膨らませる。しかしふとあることを思い出し、得意げな顔でカイトの袖を引く。
「でもちゃんと覚えてることもあるぜ! ホラ、カイト!」そう言うと遊馬は目を閉じる。カイトはしばし瞑目し、思い当たったようにああ、と一言こぼしてから遊馬に顔を寄せる。
「ただいま、遊馬」唇が重なる。
今は放課後。昇降口には帰路へつくために、東棟から高校生、西棟からは中学生が集まっている。そんな最中の出来事であった。
「な、なにしてるのよ遊馬――!」小鳥が驚きのあまり手元の紙束を落とした。
周囲のどよめきに包まれる当人たちは、自分たちがなにかしたのかと、ぱかりと口をあけたまま小鳥を見つめ返すばかりであった。
[了]
執筆2014.01.26